2026年3月2日、公益財団法人建築技術教育普及センター(以下「センター」)が令和8年度一級建築士試験の受験要領を公表しました。
その内容に、受験生全員にとって重大な制度変更が含まれています。
それが、「設計製図の試験」への法令集持ち込みの許可です。
本記事では、公式発表の内容を正確にお伝えするとともに、製図試験指導に長年携わってきた講師の立場から、
制度変更の背景と今後の試験傾向についての考察をお伝えします。
なお、制度変更の背景および今後の出題予測に関する部分は、講師の推察であることをあらかじめお断りします。
何がどう変わったか——試験構成と日程
令和8年から、「設計製図の試験」において試験中に法令集が使用できるようになります。
試験当日の携行品として「携行できるもの」に法令集が追加され、携行できる条件は「学科の試験」と同様になります。
一級建築士試験の歴史において、設計製図の試験への法令集持ち込みが許可されるのは今回が初めてです。
一級建築士試験の構成(令和8年)
学科の試験 7月26日(日)
合格発表:9月2日(水)予定
設計製図の試験 10月11日(日) ★ 法令集持込許可
課題公表:7月24日(金)頃 | 合格発表:12月23日(水)予定
令和8年 試験日程タイムライン
法令集の持ち込みルール——書き込み条件の詳細
持ち込みが認められる法令集の条件:
① 条文等の順序の入替および関連条文等の挿入を行っていないこと(条文の省略は認められる)
② 見出し・脚注等の簡単な書込み及び印刷以外に解説等を付していないこと
書き込みルール一覧
試験当日は法令集のチェックが実施されます。
認められない書き込みがあった場合、判断結果が出るまでの間は法令集なしでの受験となる場合があります。
書き込みルールは必ずセンター公式資料で直接確認してください。
なぜ今、この制度変更が行われたのか
製図試験の指導経験をもとにした、講師の独自見解です。
法知識が曖昧なまま合格する受験生への問題意識
製図試験では重大な法規違反は即失格に相当する不適合とされています。
しかし近年、法知識が曖昧なまま試験に臨み、重大な不適合が生じているにもかかわらず合格となるケースが一定数存在し、
試験の採点基準の公平性に疑念が生じていたことは否定できません。
実務との乖離という問題
実際の建築実務において、設計者は法令集を手元に置きながら業務を行います。
製図試験においてのみ法令集なしで完璧な法知識の暗記を求めることは、実務の現場とかけ離れた要求であるという指摘が以前からありました。
今回の制度変更はこの実務との乖離を是正する方向性とも読み取れます。
試験元からの「厳格化」の意志表示
法令集の持ち込みを事前に告知したことは、裏を返せば「法令集を持ち込んでいる以上、法規違反は一切容認しない」という試験元の意志表示とも受け取れます。
令和7年の合格者の中にも誤りが見られた、隣地斜線制限等の高さ制限の内容誤りや重複距離の違反疑いといった曖昧な計画に対して、
今後は厳しく判定される可能性が高くなります。
令和7年以前のイメージ
- 法令集なしで試験に臨む
- 法知識の曖昧さがある程度許容される側面があった
- 隣地斜線・重複距離の誤りなど、曖昧な計画でも合格となるケースがあった
令和8年以降の予測
- 法令集を持ち込める状態で試験に臨む
- 「確認手段があるにもかかわらず法規違反をした」と判定される可能性
- 高さ制限の誤り・法規違反に対する採点が厳格化される可能性が高い
今後の出題傾向の変化予測
製図試験の指導経験をもとにした、講師の独自見解です。
これまでの答案用紙Ⅰの標準解答例では、道路斜線制限に伴う後退緩和・採光補正係数の算定式・代替進入口と想定される外壁開口部等が図面上に明示されていました。
こうした情報を今後は受験生自身が答案用紙に明示させる形で出題されることも十分考えられます。
近年、試験問題の文字数や要求室数は過去と比較して少なくなり、エスキスのパズル的要素が簡略化される傾向にあります。
6時間30分という試験時間に余裕が生まれているとも言え、
これまで時間的制約を理由に不問とされてきた法知識の確認が、より踏み込んだ形で出題される可能性があります。
令和8年を「試行年」として捉える
当初、試験傾向の大きな変化は令和9年頃と予測していましたが、学科試験のデジタル化試行なども含め、
令和8年は今後の試験の方向性を決める試行的な出題が行われる可能性があると考えています。
どのような傾向の変化にも対応できる基礎力の習得を最優先とすることが、現時点での最善の対策です。
今から取り組むべき具体的対策
法令集の準備
実務などですでに法令集を使用している方は、その法令集を試験に持参して臨めば問題ありません。
ただし、試験に持ち込み不可な加工(認められない書き込みや改造等)をしている場合は、
7月の課題発表までに新たに法令集を購入しておいてください。
法規の知識を「書ける状態」にする
法令集を持ち込めるようになることには、試験時間中に法令集の確認作業が発生し集中力(ゾーン)が削がれるというデメリットも存在します。
持ち込んでも基本的には使わないことを前提として試験に臨む姿勢が重要です。
法規の内容を何も見ずに文章や図で書ける状態を目標としてください。
法令集は条文番号の確認など限定的な用途にとどめ、計画の段階で法令集を頼らずに済む状態を目指します。
オリジナル課題を用いた実践練習
1月に配布しているオリジナル課題は、法令集の持ち込み許可等も想定した形の出題としており、
答案用紙Ⅰおよび答案用紙Ⅱで実践練習ができる内容になっています。
さまざまな不確定な情報を気にするよりも、法規テキストの内容を理解しながら着実に習得し、
オリジナル課題の実践練習を通じて知識と技術をリンクさせ、答案用紙に反映できる状態にすることだけに専念してください。
課題発表後に判明する追加情報については、さまざまな角度で検証し対策を講じますので、
受講生の皆さんは教材の学習に専念していただければ大丈夫です。
受講生の皆さんへ——3つの心得
法令集の持ち込みが許可されても、試験中に確認作業が発生すると集中力(ゾーン)が削がれます。
当日は問題用紙の内容を確認したうえで、
基本的には法令集を使わない状況で試験に臨むことを想定して準備してください。
法規違反の判定が厳格化されることを想定し、
法規の知識を曖昧な状態で試験に臨まないよう、
対策方法を用いて完全に習得することを目標としてください。
新たな出題方法も想定して、1月の時点でテキストと課題は作成しています。
課題発表(2026年7月24日頃)以降に判明する詳細な情報を踏まえた具体的な対応策については、
課題発表日のガイダンスでお伝えします。
受講生の皆さんは、今はやるべき学習に専念してください。
公式情報:公益財団法人建築技術教育普及センター「令和8年 一級建築士試験 受験要領」(2026年3月公表)
公式サイト:https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/
考察・推察部分:講師(一級建築士製図試験指導経験に基づく独自見解)
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