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N13①では、エスキスの「完成」を定義した——規模と配置がすべて確定した状態である。では、その完成にどうやって到達するのか。答えは、工程を持つことである。工程とは、エスキスを完成させるための手順であり、各工程には「その工程を終えたと言えるゴール」と、「ゴールの先にある理想の姿(+α)」がある。この2つが明確でなければ、エスキスは毎回ゼロから感覚で進めることになる。本記事では、エスキスを構成する4つの工程の全体像と、各工程のゴール・理想を示す。

手順なく感覚で進めることが、
合格をギャンブルにする

多くの受験生のエスキスでよくある傾向として、毎回、どこから考え始めるかが違う。何を先に決めるかも、そのときの感覚で変わる。うまくいく日もあれば、途中で行き詰まる日もある。

手順がなければ、全く同じ状況でも毎回異なる判断をすることになる。さらに、目標に沿った思考を用いなければ、同じ状況のようで異なる状況に対しても区別することができず、判断を誤る。

合格に必要なのは、毎回同じ手順で、異なる条件に対しても正しい判断を行う思考を持ち、同じ完成に到達できることである。これがマニュアルを持つ意味である。
図1|マニュアルなき進め方 vs マニュアルある進め方
マニュアルなし感覚で選択 開始 感覚で選択 毎回異なる結果 → ギャンブル マニュアルあり 開始 工程ⅰ 情報整理 枝分かれ 理想で判断 工程ⅱ 2D検討 同じ完成へ → 再現性
プラスデザイン作成

手順を持つとは、4つの工程を順番に完了させることである。そして各工程では「今自分は作業をしているのか、思考をしているのか」を区別しながら進める。作業とは決まったことを紙に書き記す・数値を計算するといった手を動かす行為であり、思考とは作業の中で現れる枝分かれのルートに対して、適切な選択肢を判断する行為である。その判断の基準となるのが、各工程の「理想の姿」である。

エスキスを完成させる4つの工程

エスキスは、以下の4工程で構成される。前の工程が完了しなければ、次の工程を正しく進めることができない。

図2|エスキス4工程の全体像
工程ⅰ 情報整理 条件の全把握+推察 工程ⅱ 建築面積(2D)検討 平面規模の確定 工程ⅲ 立体構成(3D)検討 立体規模の確定 工程ⅳ ゾーン& プランニング 配置の完全確定 ⅰ〜ⅲ:規模の確定  ⅳ:配置の確定  → エスキスの完成 各工程にはゴール(到達すべき状態)と理想(+α)がある
プラスデザイン編集部作成|Link&Study Method準拠
工程ⅰ〜ⅲは「規模を確定させる」工程、工程ⅳは「配置を確定させる」工程である。この2条件が揃って初めてエスキスは完成する(N13①参照)。各工程のゴールを達成してから次へ進むことが、2時間30分以内に完成させるための唯一の道である。

4工程——ゴールと、その先の理想(+α)

情報整理
問題用紙の条件を、もれなく把握するとともに、建築士として完成のゴールを推察する
ゴール

建築主(問題用紙)が求める条件と、建物の利用者・管理者が継続して機能できるために必要な条件が、すべて頭の中に入っている状態

理想(+α)

読み取った条件をもとに、完成形の建物の輪郭が頭の中に描けていること。問題用紙には記載されていない内容でも、建築士として知っていて当然の条件——「明示しない=隠されている」内容——も含めて把握できていること。

問題用紙には、建築地・周辺の状況・建築の規模等とともに、遵守すべき法令や条件などが記載されている。試験改正後から記載されなくなった内容でも、建築士の知識として当然求められる条件は存在する。記載がないからといって無視してよいわけではない。

各工程の詳細はN13③以降で解説する
建築面積(2D)検討
建物の長辺・短辺の長さと建築面積を確定する
ゴール

建物の長辺及び短辺の長さと建築面積が数値として確定している状態

理想(+α)

屋外施設等の機能性を考慮して、屋外スペースは機能的に無理が生じない広さを確保し、建物形状は極力大きく確保すること。旅行の荷物が入れやすいのは鞄が大きい方と同じように、後工程での配置の自由度を高めるために、建物形状は極力大きい方がよい。屋外スペース・建物形状ともに、無理なく・無駄なく計画することが理想である。

図3|屋外スペースと建物形状のバランス
NG:屋外スペース過多・建物小 建物 (小) 屋外 過多 余白大 OK:無理なく・無駄なく 建物 (極力大きく) 適正 必要最小限 建物形状が大きいほど、後工程での配置の自由度が高まる
プラスデザイン編集部作成
詳細はN13④で解説する
立体構成(3D)検討
建物の高さと階の構成を確定する
ゴール

建物の階数・各階の高さ・高さに関するルールとの整合が確定し、各階に未配置面積(余裕面積)が確保されている状態

理想(+α)

高さ制限の範囲内で、全階を同じ形状で計画するか、下階から上階にかけて面積を減らすピラミッド型にするかを検討し、構造バランスと機能の両面から階構成を決定する。また、各室の面積を数値だけで積み上げると数値上は収まるようでも、実際のプランニングでは廊下・壁・コアなどのロスが必ず発生する。時間内に完成させるために、各階に未配置面積(余裕面積)を意識して確保しておくことが理想である。

詳細はN13⑤で解説する
ゾーン&プランニング
ゾーン分けから個々の室・通路・コアの位置確定まで
ゴール

すべての部屋・通路・階段・エレベーターの位置が確定し、利用者と管理スタッフの動線が整理されている状態——すなわちエスキスの完成

理想(+α)

ⅲで確保した未配置面積をもとに室を配置するが、最初から余裕のある計画を前提にすると面積がいくらあっても足りなくなる。節約志向が重要であり、無駄な廊下の量を減らすことが節約の核心である。そのために、室を整形のグループ(ゾーン)としてまとめてから廊下を通す。いびつな形状の室を混在させるとロスが増え機能性も低下するため、一定の室規模ごとに整理してゾーンを構成する。プランニングではゾーン内部を個々の室・階段・エレベーター・トイレ等に分けて確定させる。なお1階は外部からのアプローチが発生するため、利用者・管理者・サービスそれぞれのアプローチを考慮した計画が必要となる。

詳細はN13⑥で解説する

工程を、作業と思考に分けて
動かしてみる

4工程の全体像を把握したあと、次にすべきことは実際に動かしてみることである。その際に意識すべきことが「これは作業か、思考か」の区別である。

作業とは、決まったことを紙に書き記す・数値を計算する・面積を確認するといった手を動かす行為である。思考とは、作業を進める中で現れる「枝分かれのルート」に対して、適切な選択肢を判断する行為である。

図4|作業と思考の構造——理想が判断の基準になる
作業 手を動かす 枝分かれ どちらを選ぶか 判断が求められる 理想の姿 各工程の+α 判断の基準となる 目標・理想 次の作業 理想に近い選択 ← この範囲が「思考」 理想を知っているから正しく判断できる →
プラスデザイン編集部作成

各工程には「ゴール」と「理想(+α)」の2層がある。ゴールは到達すべき状態であり、理想はゴールの先にある目標である。理想を知っているからこそ、枝分かれに直面したとき「理想に近いのはどちらか」を基準に判断できる。理想を持たずに進めれば、枝分かれのたびに感覚で選ぶことになり、マニュアルなきエスキスに戻ってしまう。

ゴールを知り、理想を持つ。
その2つが揃って初めて、
エスキスは毎回同じ完成に向かう。

工程ⅰであれば、条件を把握するだけでなく完成形を推察することが理想である。工程ⅱであれば、屋外スペースと建物形状を無理なく・無駄なく計画することが理想である。このように、各工程の理想を持ちながら進めることが、合格への最短ルートである。N13③以降では、各工程を一つずつ取り上げ、作業・思考・理想の具体的な内容を解説する。