一級建築士事務所プラスデザイン株式会社

N7「わからない」の正体

N7「わからない」の正体

令和8年 一級建築士設計製図試験 対策

2026.04.08 Link & Study 編集部

「わからない」の正体を特定しない学習は、不合格一直線である

——「判らない」「分からない」「解らない」、あなたのわからないはどれか

受験申込を済ませた。教材を開いた。手を動かし始めた。

そこで必ず起きることがあります。「わからない」

わからないのを放置して、人任せに答えだけを求める。何も自分で調べず、考えず、「わかりません」と質問だけ投げる。そもそも「わからない」原因を大別せずに進む。

これらの学習行動には共通した欠陥があります。「わからない」の正体を特定していない、ということです。

Section 01

「わからない」は一種類ではない


漢字が違うと感じたことがありましたか。日本語の「わからない」は、漢字で書くと三種類に分かれます。この三つは見た目は同じでも、学習上の問題の所在がまったく異なります。正体が違えば、当然、対処も違います。

判らない判別できない
区別・選択の問題

どれがどれか区別がつかない状態

2つ以上の概念の区別がつかない
知識はあるのに場面で選べない
「どっちがどっちか」の問題
例:道路斜線と隣地斜線の使い分け
例:ラーメン構造と壁式構造の選択
定義を比較し適用条件を明文化する
分からない構成・仕組みが見えない
構造・接続の問題

全体の地図がない状態

情報の「点」が「線」になっていない
どこに何がつながるか見えない
知識は得たが全体像がない
例:法規知識と図面の対応関係
例:エスキス手順の全体像
工程に戻り知識の位置を確認する
解らない腑に落ちていない
定着・出力の問題

受動的な学習で止まっている状態

意味は追えるが自分の言葉でない
なぜそうなるかが答えられない
「頭では追えるが説明できない」
例:手順通りに動けるが判断理由が言えない
例:条文は引けるが意味を説明できない
声に出す・図に書く能動的な出力

Section 02

「わからない」の正体を特定しない学習が失敗する理由


この三分類の重要性は、教育心理学・認知科学の研究によって異なる角度から支持されています。

「わからない」の正体を自分で特定することが

学習改善の唯一の入口である

↓ この結論を、3つの研究が異なる角度から支持している

ハッティの研究(2009)Visible Learning

有効なフィードバックには「何がわかっていないかの正確な把握」が前提。約80万人・800以上の研究を統合したメタ分析。

→ 正体不明のまま答えを求めても根本解決にならない
カーネマンの研究(2011)Thinking, Fast and Slow

放置・人任せ=システム1(自動・省エネ)の反応。正体を問い直す=システム2(熟慮)の介入が必要。

→ 合格者はシステム2を意識的に使い続けている
フラベルの研究(1979)Metacognition

メタ認知:自分が何をどこまで理解しているかを把握する能力。メタ認知が高い学習者は次の行動を自分で設計できる。

→ 正体を特定できる=メタ認知が高い学習者

「わからない」の種類を特定しないまま、ただ答えを教えてもらうことを繰り返すと何が起きるか。その答えが正しくても、なぜそうなるかが理解できていないため、また別の場面で同じように「わからない」が訪れます。「わからない」を繰り返すうちに思考を放棄し、「自分には無理だ」「苦手だ」として考えることをやめてしまいます。

せっかく受験申込を済ませ、前向きな気持ちでスタートしたものが、この繰り返しによって静かに消えていくのです。

だからこそ、「わからない」を正しく自分の言葉で相手に伝えられるように、まず自己分析することが強く求められます。自己分析は、相手への正確な伝達のためだけでなく、自分自身の思考を整理し、次の行動を自分で設計するための基盤になります。

参考・出典:John Hattie, “Visible Learning”, Routledge, 2009 / Daniel Kahneman, “Thinking, Fast and Slow”, 2011(邦訳:村井章子訳『ファスト&スロー』早川書房、2012年)/ John H. Flavell, “Metacognition and Cognitive Monitoring”, American Psychologist, Vol.34, No.10, 1979

Section 03

自分の「わからない」を特定する——3つの問いと対処法


「わからない」と感じた瞬間に、次の3つを自分に問います。①から順に問いかけ、「YES」と思えた問いが、あなたの「わからない」の正体です。

「わからない」と感じた——自分に3つの問いを投げかける

区別の問題か
「2つ以上の概念があり、どちらを使うべきか判断できていないか」
YES:「判らない」が正体
定義を比較し「Aが使われる条件」「Bが使われる条件」を自分の言葉で書き出す。テキストの定義に立ち返る。
構造の問題か
「知識は得たが、どこにつながるか・全体の中での位置が見えていないか」
YES:「分からない」が正体
全体の工程に戻り「この知識はどの工程で使われるか」を確認する。Link & Study Methodで「Linkできていない」状態。
定着の問題か
「説明は追えるが、なぜそうなるかを自分の言葉で説明できないか」
YES:「解らない」が正体
「なぜそうなるか」を声に出して説明する・白紙に図を書いて再現する等の能動的な出力を行う。
3つ全てに「NO」の場合:「わからない」と感じた場所に戻り、テキスト・教材の該当箇所を読み直してから再度3つの問いを立てる。

この3つの問いは、「わからない」という感覚を学習上の具体的な課題に変換する作業です。これを行わずに「わかりません」と投げることは、「体のどこかが痛いです。何の薬を飲めばいいですか」と医師に告げるようなものです。部位も種類も特定しなければ、適切な処方は出せません。

Section 04

「わからない」に向き合う学習者だけが伸びる


受験申込を終えて学習を始めたとき、「わからない」は必ず訪れます。それは、学習が進んでいる証拠でもあります。問題は「わからない」が訪れることではありません。それを放置するか、向き合うかです。

「わからない」を前にしたときの3つの行動と、その結果
放置する・人任せにする
自己分析をせず答えだけを求める行動
同じ場所で止まり続ける。「わからない」が積み重なり思考の放棄へ向かう
原因を大別せずに進む
三分類を特定しないまま先へ進む行動
問題の所在が変わらないまま同じ誤りを繰り返す。根本的な解決にならない
正体を特定して向き合う
3つの問いで分類し自己分析してから動く行動
次にとるべき行動が明確になる。学習が前進し合格へ向かう唯一の入口

「判らない・分からない・解らない」のどれかを特定することは、10分もあればできる作業です。しかしこの10分を省いた学習は、何時間積み上げても根本的な問題が解決しません。

「わからない」の正体を特定し、自分の言葉で相手に正確に伝えられる状態にすること。それが、受験申込後に最初にすべき学習の姿勢です。

この記事のまとめ
1
「わからない」には「判らない(区別の問題)」「分からない(構造の問題)」「解らない(定着の問題)」の三種類がある。正体が違えば、対処も異なる。
2
正体を特定しないまま放置・人任せにする学習はメタ認知の欠如であり、思考の放棄へとつながる。せっかく前向きに始めた気持ちが、この繰り返しで消えていく。
3
「わからない」を感じた瞬間に3つの問いを自分に向けて正体を特定し、自分の言葉で相手に正確に伝えられるようにすること。それが学習を前進させる唯一の入口である。
Link & Study — 令和8年対策

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